屈辱。

看護師になって、6年が経つ。

最初の配属先が手術室で、その後は整形外科の病棟へ。

夜勤中にイレウス疑いの急患がきた。

イレウスというのは、簡単に言うと腸の通り道が塞がってしまっている状態。

その為、排便や排ガスができなくて腹痛や嘔吐してしまう。

そんなぐらいしか知識がない。

これも合っているかもわからない。

なので、どう処置するのかわからないがとりあえず急患の担当なので対応をする。

行くとドクターがもういた。

廊下に患者。

とりあえず、必要以上に苦しんでいないし、緊急性はなさそうでほっとする。

点滴ぐらいの処置で、あとは病棟でやってもらおうかなと、病棟に入院の依頼と患者の状況の報告。

ドクターはひたすらパソコン入力。

このドクターはクセの強いドクターで、患者を診る前にパソコンを入力する。

入力が終わると患者を入れるように指示をする。

今日はなかなか呼ばない。

紹介状があったので、患者を診ないつもりなのかと。

と、突然ドクターがキレた。

患者はまだ来ないのかと!

ずっと待ってますけど・・・

それを知り、さらに激怒。

何で言わないのかと!

そこからドクターの診察がはじまるが、怒りのコントロールは不能。

とっとと点滴とって、マーゲンチューブを入れろとの指示。

マーゲンチューブ挿入は、看護師にとっては基本的な技術なのだが、研修の時にやった以来で、やり方も覚えていなければ、物がどこにあるかもわからない。

しかも、担当ドクターは待たされたことに腹を立て怒りモード。

よくあることと言えばよくあるシチュエーションなので、この辺の対応は得意ではある。

すぐに今日の夜勤の看護師にヘルプの電話。

たまたま電話に出た看護師は当たりだった。

優しい後輩。

ヘルプのお願いにも快諾。

普段から優しい先輩を演じていると、こういう時に助けてもらえるからいいな。

とりあえず、点滴を入れる。

点滴も苦手で患者の血管も細かったのだが、超高速技で点滴ルートの確保に成功。

そしてちょうど後輩登場。

後輩の助けを借りて、なんとか乗り切る。

処置も終わり、ドクターの怒りも静まり、患者を病棟へ送る。

あとは病棟にお任せ。

病棟には小うるさい先輩もいたが、得意のゴマスリで逃げる。

全部終わって、片付けて次の急患担当者にバトンタッチ。

次の担当者は、できの悪い後輩。

しかし、部署の関係もあり、そいつにとったらマーゲンチューブなんて朝飯前。

こっちの顔をみて、この人大丈夫なの的な目線を送ってきた。

お前にそんな目でみられる筋合いはないと思うが、ヘルプしてもらったことは事実なので、ぐっと耐える。

とりあえずは、スルー。

するとその後ろから、マーゲンチューブ無事に入りました?と尋ねる声が。

振り返ると、そこには看護助手が。

完璧にマーゲン入れれないんだ~的な視線。

この看護助手の野郎!と完全にぶちギレだが、クールに対応し、何もなかったようにバトンタッチして戻る。

しかし、心の中は屈辱に煮えくりかえっている。

その看護助手は、同期入職なんだか看護師国家試験に受からなくて、いまだに准看護師の免許すら取れないただのバカ。

そんなやつにバカにされるとは。

こんな屈辱的な目にあうとは。

こんな病院辞めてやる方向に一気に傾く。

自分の病棟に戻るが、収まらない怒りと屈辱。

しかし、これでイレウスの対応も分かり、また一歩成長できた実感もある。

看護師なんて所詮経験値。

経験を積めば、誰だって。

国試の受からないバカだって、経験積めば対応はわかる。

これが、病院で務める看護師。

いろんなケースにあたり、様々な対応方法や技術を経験し身に付けていく。

それが、老健にいくと。

この技術の向上の機会が減り、病院に戻れなくなると言われている。

経験も技術もないまま老健に行くのか。

そう考えると、老健に行って経験のないケースに遭遇したらどうしようという不安。

経験を積まずに、技術のない看護師になってしまう不安。

病院を辞める気持ちが、もう少し続けてもという気持ちも。

なんなんだ。

どっちなんだ。

誰か相談にしたい。

こんな時に、彼女がいない・・・